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Noritaka Tatehana meets artience
Year
2026
Partner
artience Co.,Ltd.
Project
Art Collaboration
Focus
Color / Material / Craft / Upcycling
Year
2026
Partner
artience Co.,Ltd.
Project
Art Collaboration
Focus
Color / Material / Craft / Upcycling


01 — WHERE COLOR BEGINS
本プロジェクトは、舘鼻則孝がartienceのインキ製造工場を訪れ、色が生み出される現場に触れたことから始まりました。
工場では、さまざまな原料が配合され、職人の経験と感覚による細かな調整を重ねながら、一つひとつの色がつくられています。調色部門で目にしたのは、数値だけでは完結しない、人の手と判断によって色を追い込んでいくプロセスでした。
舘鼻はその現場を通して、普段は完成されたものとして目にする「色」の背景にある、素材、技術、時間、そして手しごとに着目します。




02 — STUDIES AND EXPERIMENTS
工場で目にしたもう一つの存在が、インキの製造工程で生じる余剰でした。本来の役割を終えたそれらのインキには、製造された色の痕跡が幾層にも重なり、意図してつくることのできない表情が生まれていました。
舘鼻はこの「余剰」を新たな表現の起点として捉え、色彩の断片を採取し、再構成するための実験を始めます。
《Study for Abstract Painting (Surplus)》では、インキの粘度や量、配置、スキージによる圧力や動きを検証しながら、作家の意図と素材が生み出す偶然性のあいだを探りました。繰り返される試行錯誤を通して、余剰のインキは絵画を構成する新たな素材へと変化していきます。



03 — RETHINKING SURPLUS
「余剰」とは、必要とされたものをつくった結果として残されたものです。しかし、それを単なる不要物としてではなく、制作の過程そのものを内包した存在として見ることはできないか。
異なる色が重なり合った余剰インキには、工場で行われてきた無数の調色の痕跡が残されています。そこから一部を切り取り、新たな関係性のもとに配置することで、過去の製造工程に由来する色彩は、別の時間と意味を持ちはじめます。
既存の価値や役割を問い直し、新たな視点から読み替える「Rethink」という舘鼻の制作姿勢を通して、余剰は作品を生み出すための可能性へと転換されます。





04 — FROM SURPLUS TO PAINTING
《Abstract Painting (Surplus)》は、artienceのインキ製造工程から生まれた余剰インキを用いて制作された絵画作品です。
幾層にも重なったインキから色彩の断片を採取し、それらを画面上に配置した後、スキージによって一つの平面へと展開します。色を選び、配置する作家の意図に対して、インキは粘度や層構造、圧力によって予測できない混ざり方や境界を生み出します。
そこに現れる色彩は、舘鼻があらかじめ描いたものではなく、工場で蓄積された時間と作家の行為、そして素材そのものの性質が交差することで生まれたものです。
女子美アートミュージアムで開催された「Rethink — 舘鼻則孝と手しごと —」では、本作を通して、色をつくる現場から始まったartienceとの協働の成果が初公開されました。




Abstract Painting (Surplus)
CONCEPT
本作は、インキの調色工程において余剰となった廃インキを素材として制作された絵画作品です。
使用されているインキは、本来、企業やブランドのために調色される特色インキです。大量生産社会のなかで用いられるこれらの色は、調色のたびに余剰分が生じ、廃棄用の容器へと集められます。しかし高い粘度を持つ性質ゆえに互いに混ざり合うことはなく、時間の経過とともに層状に堆積していきます。
舘鼻則孝は、その堆積したインキの層にヘラを差し込み、採取した断片を画面上に配置したのち、スキージによって展開することで生じる痕跡を絵画として表現しています。画面に現れる色や形態は特定のモチーフを描いたものではなく、異なる時期や用途のために生み出された無数の色が、物質の性質と制作行為の相互作用によって形成されたものです。
作家は、堆積したどの層を採取し、どこへ配置するかを選択します。一方で、画面上に立ち現れる最終的な表情は、インキの粘度や層構造、圧力といった物理的条件によって変化します。本作は、そのような作家による制御と素材がもたらす偶然性とのあいだから生まれる表現でもあります。
それぞれの色は、企業やブランドの意向によって設計され、市場によって選び取られた色彩の痕跡です。本作は、現代社会が生み出した色彩の堆積層を抽象絵画として再構成することで、現代日本の市場が形成した色彩の断面を可視化する試みです。
ON THE TITLE
《Abstract Painting (Surplus)》—主題の「Abstract Painting」は、本作が特定のモチーフを描くものではなく、絵画という営みそのものを対象としていることを示している。括弧内の「Surplus(余剰)」は、本作の素材が市場の調色工程で生じた廃インキ、すなわち社会が生み出した色彩の余剰であることを示す。
抽象絵画は、描くべき対象を手放すことによって、絵画それ自体の物質性や成立の条件を問うてきた。この題は、そうした抽象絵画の歩みを踏まえつつ、描く対象としてのモチーフから、絵画を成立させる素材と方法へと作家の関心が移行したことを示すものである。





Photo: GION / NORITAKA TATEHANA STUDIO